~映画「チア☆ダン」TOPICS④ ~

一般社団法人 日本チアダンス協会(JCDA)前田代表理事インタビュー

映画「チア☆ダン」のチアダンス指導を担当された、一般社団法人 日本チアダンス協会(JCDA)の前田千代 代表理事にお話を伺いました!

映画のモデルとなった福井商業高校のチアリーダー部を7年間ほど指導されていた前田代表理事。ご自身が指導されたチームが全米制覇を成し遂げるまでのエピソードや、「チア☆ダン」でのチアダンス指導の様子などをお話しいただきました。

 

 

 JCDA 前田千代 代表理事 プロフィール ~

 

一般社団法人日本チアダンス協会 代表理事、Team JCDA チームディレクター。

これまで数々のチアダンス競技チームを指導し、全国大会優勝、全米チアダンス大会優勝へと導く。

全米チアダンス大会においては6回のコリオグラフィー賞を獲得。

これまでチアダンスを取り上げたドラマやテレビ番組、映画での振付を担当。


---映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』は、福井県の高校チアリーダー部がたった3年で全米大会を制覇するまでの軌跡を描いた物語ですが、「チアダンス」とは、どのようなスポーツなのでしょうか?

チアダンスは、応援から派生したダンスです。チアリーディングから、アクロバティックな動きや人を乗せるといった要素を省き、ダンスに特化したもの、と言えばわかりやすいでしょうか。

チアダンスは、ポン・ラインダンス・ジャズ・ヒップホップという4つの要素で構成されています。JCDAが主催する競技大会では、4つすべての要素を含むチアダンス部門と、ポン部門、ジャズ部門、ヒップホップ部門の4つに分かれています。

様々なジャンルを踊り分けますが、すべてにおいて人を盛り上げる・応援するという要素が含まれる、というところが特徴です。

 

---この映画に関わるようになったきっかけは?

映画のモデルとなった福井商業高校のチアリーダー部を、私が7年間ほど指導していました。そのご縁で、この映画の技術指導を担当することになりました。

私が福井商業高校を教え始めたのは約10年前ですが、その3年後の2009年に全米優勝しました。

 

---たった3年で全米を制した勝因は何だったのでしょうか?

一番は、とても純粋で素直な子たちだった、ということ。

そして、顧問の五十嵐先生の情熱ですね。コーチとして私が通えるのは、月一回程度。五十嵐先生は、技術以外のスピリット面、練習方法など、細やかに見ていてくださいました。

五十嵐先生の“夢を大きく持つ”という信念が、生徒たちを変えていったんだと思います。全米制覇したメンバーは、もともと技術があったわけではありません。ほぼ全員が初心者だったんですから。でも、どんな子でも、環境によっていくらでも変われる、ということなのだと思います。その他にもたくさん秘訣はあるのですが、映画ではそれがすべて盛り込まれているので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

 

---当時の福井商業高校のチアリーダー部が3年で全米制覇できると思っていましたか?

正直に言うと、思っていませんでした。

顧問の五十嵐先生は、私が教え始めて1年目で「アメリカに行きましょう!」とおっしゃいました。私は優勝するために教えているわけではなかったので「結果としてそうなったらいいですね。目標高く持ちましょう。」とお話していたのです。今思えば、私も五十嵐先生に洗脳されていったのかもしれないですね(笑)

 

---最初から勝つために教えていたわけではないんですね。

優勝するためにチアダンスを踊ってほしいわけではないんです。優勝は、頑張った結果として、後からついてくるものですから。

私は、本来の良さを引き出して輝かせるために、メンバーの個性やチームのカラーに合う振り付けをしています。でも、勝つことを意識しすぎるとメンバーの持つ本来の良さが出なくなってしまうんです。

福井商業高校のチアリーダー部「JETS」というチームには清潔感があります。純粋で本当に素直なメンバーばかりです。見ている人がハッピーに、元気になれるという意味で、とてもチアダンスらしいチームと言えます。

 

ですが、全米を制したあと「一度優勝できたのだから、また勝ちたい」という良い欲が出てきました。追われる立場になり、優勝を意識しすぎてしまって、踊りにその気持ちが出てきてしまったんです。そこで、練習を中断して「何のために踊っているのか」をもう一度考えさせました。すると、「自分のために踊りたい」「支えてくれた人たちへ感謝の気持ちを伝えたい」と、「優勝」以外の言葉が出てきて、原点に立ち返ることができました。

 

---映画の中でも、かなり本格的なダンスシーンがあるようですが、どのように指導をされたのですか。

メインキャストは、ダンス経験がほとんどなかったので、立ち方から指導しました。

その他のダンスメンバーは、オーディションで選抜されています。オーディションを行ったのは昨年(2015年)の12月でした。メンバーが確定してから振りやポジションを考え、メインキャストの練習を始めたのが1月。3月末からダンスメンバーとメインキャストが合流して本格的に練習し始め、4月の一ヶ月で集中して仕上げ、5月から撮影でした。

主役である広瀬すずさんを始め、メインキャストのみなさんはお忙しいのでなかなか練習に参加できなかったため、個別指導も行いました。みんな頑張っていましたよ。


 

---ダンスシーンを撮影するにあたって、心がけていたことはありますか?

実話なので、なるべくチアダンスの本来の姿に近づけるように心がけました。高校生らしさ、福井商業らしさが出ること、加えて、キャストのみなさんも輝けること、を意識しました。

全米優勝する話だけどメインキャストはチアダンス初心者、という点は難しかったですね。でも、「踊れない・・・」と落ち込んでしまって、メインキャスト自身がチアダンスの楽しさをわからなければ、映画を見ているひとに伝えることはできません。ですので、チアダンスの本来の楽しさが出せるように普通のチームと同じように教えました。

 

踊れた時は、本人たちもすごく泣いていました。演技もしないといけないので必死でこらえてましたけどね。チアダンスを好きになってくれたようで、とてもうれしいです。

 

---今回の映画では、限られた時間の中でチームワークを作り上げる必要があったと思います。どういった工夫をされたのでしょうか?

メインキャストのみなさんは、初めは体で動きを覚えるのが精いっぱいでした。最初は個別指導で丁寧に教えていましたが、ダンスメンバーと合流してからは、メインキャストだけに注目するのではなく、全体を指導するようにしました。

ダンスメンバーはチアダンス出身者が多かったので、私の話に対して「はい!」と返事をする、パパッと動く、といった動きを当たり前にします。その姿を目の当りにして、メインキャストのみなさんはびっくりしていたと思います。目の色が変わり、「この世界観に入っていけない」「動きが難しくてついていけない」と不安に思っていることが伝わってきました。

でも、あえてその時にフォローはせず、練習が終わったあとに集めて話をしました。「撮影期間は決まっているし、この映画は優勝するストーリーなのだから、そこがゴール。ダンスメンバーは何十年も踊ってきた子たちもいるのだから、比べてはいけない。みんなはキャストとしてここにいないと、映画は成り立たない。だから諦めないで。でも無理して怪我をしてしまっても、代わりはいない。できないことはフォローするから、とにかく一生懸命ついてきて。」と。

チアダンスは、チームの中での一人ひとりの役割が大切です。私の話を聞いたあとは、それぞれが自分の役割を見つけたようです。そして、メインキャストとして「演技もダンスも頑張ろう!」と思ってくれたのだと思います。

 

チアダンスは「立ち位置、もっと前だよ!」などお互い声をかけあって練習するもの。ですが、初めのうちはダンスメンバーがメインキャストに遠慮しているようでした。どこまで踏み込んでいいかわからず、気づいていても言わなかったんです。でもそれでは、チームじゃない。だから「遠慮しなくていいよ」と伝えました。

すると今度は、言い方ややり方の違いが浮き彫りになってきたんです。いろんな人が、いろんなチームから集まってきているので、「自分のやり方を押し付けるのは違う。言われた側の気持ちを考えて、言葉を選んで。」と伝えました。

メインキャストもダンスメンバーも年が近かったので最終的にはみんな仲良くなって、それが踊りにも出ていたと思います。

 

---映画のダンスシーンの中で、注目してほしいポイントはありますか?

先ほどもお話しましたが、チアダンスの競技大会には、チアダンス部門、ポン部門、ジャズ部門、ヒップホップ部門の4つの部門があります。その中で、この映画は「チアダンス部門」に挑戦したお話です。チアダンスは、いろんなジャンルが踊れるというのが大きな魅力。一つのジャンルを突き詰めるのも素敵なのですが、ポンもラインダンスもジャズもヒップホップも踊ることで、自分の可能性や表現力が広げられると思います。だから、高校生や大学生といった若い時期に経験してほしいです。

 

映画の中でも、難しい4つのジャンルの踊り分けに挑戦しています。ポンだけだったら、もっと早くできたかもしれない。ジャズは得意だけどヒップホップは苦手な子がいたり、その逆の子がいたり。できないからこそ一生懸命練習する面白さがありました。苦労しましたが、すべて自分たちでやりきったんです。ぜひそこに注目してあげてください。

 

---貴協会の公認インストラクターが無料でレッスンを行う「日本全国、チアダンスしよっさ!キャンペーン」について、教えてください。

(※チアダンスしよっさ!キャンペーンの詳細はこちら

実話を映画化する上で、私や福井商業側、そして制作側にも「チアダンスを普及したい」という思いがありました。そこで企画されたのが、この「チアダンスしよっさ!キャンペーン」です。JCDAとしても、大会運営やすでにあるチームの指導を優先して活動していると、これからチアダンスをやりたいという人たち向けのレッスンは後手になってしまいがちです。

だから、このキャンペーンでは、チアダンスを知らない、習う機会がない人たち向けにレッスンをしたいと思っています。現時点(11月上旬)で全国から60以上のご応募をいただいていて、とてもうれしいです。これを機にチアダンスの魅力を知ってもらいたいですね。

「日本全国、チアダンスしよっさ!キャンペーン」

 

---この映画を通じて、伝えたいことはありますか?

チアダンスは、踊っている時は華やかだし、時に派手だと思われることもあります。でも裏側にはいろんな苦労と地道な努力があり、チームワークや協調性が大きく問われます。技術も大切ですが、熱意はもっと大切なんです。特に今回は、例え嫌われようと真正面から向き合って、良いと思うものを伝え続けた顧問の先生の、生徒を思う気持ちが描かれています。そういう意味で、教育にとても良い、ということが伝わるといいなと思います。

チアダンスをやっていた人は、多かれ少なかれ同じような経験していると思うので、「そうそう、こういうことあった!」と懐かしく思うのではないでしょうか。チアダンスに初めて触れる人にも、こんな魅力があるんだな、と思ってもらえたらいいですね。

 

---映画に携わった感想、思いを教えてください。

まずは、自分が一から指導した子たちが、映画という形で世の中に出るなんて!という驚きです。そして、チアダンスが広がっていくことがうれしいですね。

 

平日は一ヶ月新潟に泊まり込んで撮影に立ち会い、アメリカでの撮影にも同行しましたから、思い入れはたくさんあります。実話ベースなので、「こういうことあったな」と涙をこらえることもしばしば。五十嵐先生は、怖く見られがちだけど本当はチャーミングで、生徒を心から思っていて…という姿もちゃんと描かれていて、感動するし、面白いです。今は、映画の公開がとにかく楽しみです!

 

---最後に、映画を見て「チアダンスを始めたい!」という人に一言お願いします。

チアダンスって、華やかだし、元気いっぱいでかわいいし、きっと憧れますよね。床と音楽さえあれば、誰でもできますよ!スクールや部活がない地域もまだあるかもしれませんが、周りに1人でも2人でも、チアダンスをやりたい!という仲間がいたら、ぜひ一緒に始めてみてください。

JCDAは、そういう人たちを応援しています。困ったことがあればサポートしますので、ぜひ勇気をもって一歩踏み出してくださいね!

掲載日:2016.12.6

映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』は、2017年3月11日(土)公開です!

 

☆公式サイト :

http://cheerdance-movie.jp/

 

公式Twitter :

https://twitter.com/cheerdance_mov

 

(C)2017映画「チア☆ダン」製作委員会